穴だらけのベテランを作らないために

自分の後輩が、年月がたち、入ってきた新入社員の質問に答えている様子を見ると、成長を感じてうれしくなるものです。

自分もああやって、先輩からいろんなことを教わって、後輩の質問に答えられるようになってきたんだと、感謝の気持ちと懐かしさを感じます。

業務遂行のための能力を身に着ける為に、こうやって先輩に教えを乞うことが、多くの企業で普通に見られる光景なのですが、これは「教育」と位置付けた育成方法と考えてはいけません。

後輩の質問に答えるだけを教育としてしまうと、知識が穴だらけになってしまうからです。

後輩は、自分が疑問に思ったことしか聞いてきません。

以前の記事にも書きましたが、人は基本的に教えたことしかできません。

会社の業務であればなおさらです。

リンク:教育のノウハウを蓄積せよ

私は設計部に配属していた時、上司に怒られたことがあります。

うちの会社の設計計算は、VBAによりプログラムが組まれ、数字を穴埋めするだけで完成します。

なので、設計者は穴埋めする数字を、単位に気を付けながら確認・入力するだけでした。

その結果を基に図面を引いていくのですが、その作業は新人であれば遅いのです。

他の部品との干渉や接合など、考えなければいけない事はたくさんあるのです。

そして、上司に怒られたのです。

「お前は設計計算を理解していない」

その時まで、私は自分の今の設計者としての問題は、スピードであると考えていました。

先輩たちが1日で出来る設計を、3日も4日もかけていた時期があり、上司をイライラさせた過去があったからです。

速さを追及する為に、計算はプログラムに頼るという行為に疑問に思いませんでした。

私は、自分で考え付いた問題点を、自分で思いついた方法で解決しようとしていただけなのです。

上司の考えは違うものでした。

設計計算を理解し、設計者としてのカンを養う糧にしてほしかったのです。

上司が、部下にどのように成長してほしいかなど、言ってもらわないとわかりません。

企業では、特に中小企業では、教育、技能向上は、社員が能動的に行うものだという考えが強いです。

しかし、それでは自分で気が付いた事しか学べません。

上司が大切だと思っている事と、部下が大切だと感じる事は違うのが当たり前です。

間違いに気が付かないまま、年だけはベテランになってしまいます。

年の割には、意外な事を知らなかったと、恥をかくだけなら良いのですが、大きなトラブルの原因となることもあります。

教育は、教える側が積極的である必要があります。

部下の自主性に任せていると、何処に知識の穴が出来るか分からないのです。

私の後輩は大変優秀な設計者でしたが、化学系出身で、加工について学んだことはありませんでした。

しかし、ほっといても自分でどんどん吸収していくので、積極的に上司・先輩が教える事はありませんでした。

ある時、溶接加工した部品が熱で歪んでトラブルになった事がありました。

彼は、溶接で金属が変形してしまう事を知らなかったのです。

ベテランであれば、材料厚みを厚めにとり、旋盤で平らに削り取る事を知っています。

結局、材料再調達となり、納期が大きく遅れる結果となりました。

学校の授業であれば、教科書があるのでどのような知識が存在するのか自分で勉強する事が可能です。

しかし、企業では「マニュアル」がない場合が多く、自分で勉強した結果が、仕事をする上で役に立つかはわからないのです。

だから、教える側が手綱をとってあげなければいけないのです。

仕事に対し、積極的に学んでいく人、自分からは積極的でない人、まったく勉強しない人など、会社の中にも様々な人がいます。

企業は、いろいろな人がいる中で、会社にとって有益な人材を育成するために、もっと積極的に教育メソッドを構築していくべきなのです。

社員の自主性だけに期待するのは、企業の教育ではないのです。

仕事を数をこなしていけば身につく知識もあるでしょう。

ですが、業務遂行のために本当に必要だと考える知識・技能があるならば、教える側が積極的になりましょう。

それをやらなければ、優秀な新人は、意外な知識が抜け落ちたままベテランになってしまうのです。

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